2023年08月21日
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三百字小説『鯛を食べたい』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 「私はタイから来た鯛の【たべたい】と申します」

 突然やってきた鯛がそう言った。

 なんと目出度いことだ。

 丁度魚が食べたかったところだ。

 俺は鯛の【たべたい】を食べたくなった。

 「おまえが食いたい。食っていい?」と俺は言った。

 「慶事に食べられるのが鯛の本懐。どうぞ。して、どんな慶事がありましたかな?」

 考えてみると、奥さんには逃げられ、パチンコで負けて、宝くじは外れた。

 何も良いことは無かった。

 「慶事がないなら私は帰ります」と鯛は言った。

 「待った! 俺は職業が刑事!」

 「おお! そういうことなら牛乳とアンパンを差し上げます。ではさようなら」

 鯛はタイに帰って行った。

 「なんてことですたい!」

(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)

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